地方自治体と都道府県マンション管理士会の共同で開催される「無料相談会」には、様々な悩みを抱える方が来訪されます。もちろん相談しただけですぐに解決するケースは稀なのですが、筆者を含めマンション管理士は少なくとも何らかの処方箋を出すことが可能です。
【前編】『マンション管理士も驚愕、共有部分で大問題を起こした「ヤバすぎる住人」の正体』に引き続き、ここからは筆者が相談会で遭遇した事例をいくつか紹介しましょう。
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相談者Cさん:
69歳の女性、夫に先立たれて築34年の小規模マンションで約20年間暮らしている
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Cさんが暮らす小規模マンションの管理は、TVでCMが流れている大手の管理会社にすべて委託されており、理事会はまったく開かれていません。理事長と管理会社も、“なあなあな関係”にあるようでした。そのような状況でトラブルが発生したわけです。
始まりは5年前でした。Cさんが住むすぐ上の部屋に、妻と幼い子どもを連れた若い男性Dさんが引っ越してきたそうです。Dさんは入居前に、組合や理事会へ届け出ることなく部屋のフルリノベーションを実施しました。
Cさんによるとそれ以来、階上から聞こえるトイレの水洗音がひどくなり、気になって生活に支障をきたしています。その夫婦は近く退去する予定で、その際に売主であるDさん立ち合いの下、管理会社、施工業者が水音調査にやってくるそうです。その時に自分一人では不安なため、筆者にもついてきてほしいという相談でした。
相談を受けた時から引っかかっていたのですが、壁の奥にある専有部分の配管(いわゆる横管)の工事を行ったとしても、「水洗音がひどくなる」というのは経験上ありません。本当に音がひどくなっているのであれば、何か別の問題が発生しているかと思われます。ただその点を率直に伝えても、問題は解決しません。疑問を抱えながら、筆者も後日その水音調査に立ち会うことになりました。
終始CさんがDさんに文句をつけながら調査は終了しましたが、その結果、問題は検出されませんでした。Cさんは「何かがおかしい!」とずっと主張していたものの、どこを調べても手がかりはありません。そうなると水音の原因は何かほかにあると考えられますが、結局わからずじまいでした。
その後、なぜか上のフロアに住んでいるDさんから筆者に電話があり、ようやく事件の全貌がつかめたのです。実はCさんはかなり口うるさい「モンスタークレーマー」だったようで、Dさんが引っ越す理由も彼女が文句をつけてくるからでした。「夜中の水洗音が迷惑だから、トイレを使っても流すな!」とまで言ってきたらしく、子どもに危害が及ぶことを恐れて退去を決めたそうです。
マンションの騒音トラブルの土台には、人ぞれぞれの「音の感じ方」やメンタルの状態など、主観的な要素が存在しています。いかに高機能な高級マンションであったとしても、近隣の生活音から100%逃れられる物件はありません。仮に生活音がうるさいと感じても、Cさんのように騒音の元だと思われる部屋へ直接出向いて、何度も直談判におよんだのはまずかったでしょう。
これから新しい住人がDさんの部屋に引っ越してきても、同じトラブルが発生するかもしれません。すべてが終わってから、Cさんには以上の点を懇切丁寧に説明し納得した様子でしたが、果たして理解してくれたのでしょうか…?
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